米軍「思いやり」協定 民・自・公が可決 共産=反対
衆院外務委で「協定も聖域とせず見直すべきだ」と迫る
衆院外務委員会は30日、今後5年間、在日米軍に毎年約2000億円を支払う「思いやり予算」特別協定を民主、自民、公明の賛成多数で可決しました。日本共産党の笠井亮議員は反対討論で、「今、思いやるべきは米軍でなく東日本大震災の被災者だ。特別協定をきっぱりやめるよう米国と交渉すべきだ」と主張しました。
笠井氏は、日米地位協定24条では、協定で負担する労務費や光熱水料など在日米軍経費は米国負担と定めていることをあげ、「日本側に負担する義務のないものだ」と指摘。今回の協定では負担項目と金額で日本側の負担をさらに増加させるものになっていると批判しました。
この日の質疑で笠井氏は、特別協定で増額する米軍施設整備の目玉に、「太陽光発電をはじめとした再生エネルギーの導入」が明記されていることを指摘し、「被災者は仮設住宅や個人補償など国の支援を待ちわびている。こんな時、日本の税金で米軍住宅のエコ対策なのか」と追及しました。
北沢俊美防衛相が「米軍が身銭を切って支援してくれている」などと弁明したのに対し、笠井氏は、「米国だけでなく世界各国が無私の支援を差し伸べている。特定の国にだけ『見返り』のように言うのは筋違いだ」と批判しました。
笠井氏は、「菅首相も救援・復興にむけた財源について『全てのことが検討材料』と述べており、特別協定も『聖域』とせず見直すべきだ」と迫りました。
(しんぶん赤旗/2011年3月31日より)
◆審議録(bt_20110920120648.pdf)
◆論戦ハイライト
「思いやり予算」=5年間で1兆円の支出を継続
「思いやるべきなのは米軍でなく被災者だ」
日本共産党の笠井亮議員は30日の衆院外務委員会で、未曽有の大震災に苦しむ被災者をよそに5年間で1兆円規模の税金を米軍へ支払うことを前提にした「思いやり予算」特別協定を強引に進めるやり方は認められないと批判しました。
笠井氏は、「大震災で戦後、未曽有の困難に直面しているのは日本だ。それでも2000億円もの膨大な金額を今後5年間、払い続けることが妥当か」と質問しました。
事情は変わった
北沢俊美防衛相は、「日米同盟、安保条約は重要な役割を持っており、災害で財政的に大変だと一緒に論ずるのはいかがなものか」などと答えました。
笠井氏は、17日の日米首脳電話会談で、オバマ大統領から「中長期的な復興も含め、あらゆる支援を行う用意がある」と伝えられたことを示し、「事情が変わったと米国に伝えるべきだ」と主張しました。
笠井氏は、特別協定で新たに増額する米軍施設整備の目玉として、「太陽光発電をはじめとした再生可能エネルギーの導入」が明記されていることを指摘しました。
笠井 何よりも大震災の救援・復興のためにばく大な費用をつぎ込まなければならない時だ。被災者は、仮設住宅や個人補償など国の支援を待ちわびている。こんな時、日本の税金で米軍住宅のエコ対策なのか。こうした支出は国民の納得を得られると思うか。
北沢俊美防衛相 その懸念が国民の中にあるのは承知している。しかし米軍はいち早く災害で努力している。身銭を切って本気で支援しており災害を受けた人も理解してくれている。
笠井 世界各国は日本との関係いかんにかかわらず無私の支援を差し伸べてくれている。身銭とか、アメリカがやってくれている、とか言って、特定の国にだけ「見返り」のようにいうのは筋違いだ。
かつては批判も
笠井氏は、「思いやり予算」特別協定が1987年に締結された際も、「暫定的」「特例的」「限定的」に行うものだと当時の政府が説明してきたことをあげ、これをどう理解しているのかとただしました。
松本剛明外相 年限を区切って、どういった対象にするか協定の中に記し、おはかりいただいている。
笠井 自公政権時の答弁と同じではないか。民主党は2008年、前回特別協定の審議の際、その説明に納得しなかった(場内笑い)。「20年以上も暫定措置を続けたら原則が忘れられてしまう」などと批判してきたではないか。
笠井氏は、2006年10月2日の衆院本会議で松本剛明外相自身が特別協定の改定に反対し、「結果として米側の要求丸のみ、地球規模の米軍の下請け構図になっていく」と述べていたことを示し、政権に就いたら考えが百八十度変わるのかと質問。松本外相は「米軍の下請けであるという立場ではない」「当時は質問させていただいた側として質問した」とまともに答えられませんでした。
笠井氏は、オバマ米政権は、自国の軍事費削減を進める一方で同盟国に負担強化を求める政策を進めているとして、「未曽有の震災に見舞われているとき、米国の軍事費削減を日本国民の税金で補てんするのか。『思いやる』のは米軍でなく被災者だ」と主張しました。(しんぶん赤旗/2011年3月31日より)