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【第190通常国会】PKO武器使用拡大の現実/戦争法で検討/狙撃・射殺・人質死亡…(16/2/29予算委)

笠井議員暴露の防衛省内部文書

 「実際の作戦は、武装集団を射殺することはおろか、万が一、失敗すれば文民等を死亡させるリスクもある」。日本共産党の笠井亮議員が29日の衆院予算委員会で暴露した防衛省の内部文書はこう述べ、戦争法によって自衛隊がPKO(国連平和維持活動)で戦後初めて「外国人を殺し、戦死者を出す」任務まで可能になることを、政府自らが認める衝撃の内容となっています。

これが「奪還」作戦
 同文書は、PKOに参加している他国部隊や文民要員が離れた場所で武装集団に襲われた場合などに自衛隊が救出に向かう、いわゆる「駆け付け警護」の内容を検討したもの。
 以前から議論されてきた市街地での銃撃戦や暴動に自衛隊が加勢するケース(「退避支援」型)に加え、屋内に拘束された人質を救出するケース(「人質救出」型)も想定しています。後者では、これまでの自己保存型を超える、任務遂行型の武器使用権限を「不可欠」と位置づけています。
 こうした「人質奪還」任務の検討は事実か―。笠井氏の追及に対し、中谷元・防衛相は「現時点で具体的な訓練を開始していない」としつつ、「あらゆる面で検討はしている」と述べ省内で作業を進めていることを認めました。
 笠井氏が示した同文書の「イメージ図」(図)には、「人質救出」型の詳細な検討内容が記されています。
 人質とともに武装集団がたてこもった建物内へ、自衛隊の部隊がヘリコプターや閃光手榴弾を使いながら、4班に分かれて隠密に「突入」を開始。狙撃情報要員は離れた位置から相手の見張り役を「必要により狙撃・射殺」し、武装集団がすでに5人ほど血を流して横たわっている状況も生々しく描写されています。
 さらに建物外には、作戦によって負傷した自衛隊員1人と人質1人に応急処置が施されている姿もあります。
 「警護」のイメージをはるかに超えた、急襲作戦そのものです。

特殊部隊が突入
 同文書が、一連の作戦を「特殊な部隊のみ実施可能」として、自衛隊による特殊作戦部隊の投入を当然視している点も重大です。
 笠井氏は「陸上自衛隊唯一の特殊部隊」である中央即応集団・特殊作戦群(千葉県・習志野駐屯地)が、イラク派兵などの海外任務に随行してきたという元群長の証言を示しました。
 中谷防衛相は、特殊作戦群があらゆる事態に対応できるようにしており、「累次、イラクやPKOの派遣が行われた」と答弁。毎回の派兵に同群が随行していた可能性を示唆しました。
 同文書は、「人質救出」型の遂行のために、「狙撃、突入のための武装」や「空からの突入に備え回転翼機も必要」と明記。「特殊作戦を遂行可能な要員を増員」とも述べ、重武装化・戦闘能力強化の必要性を露骨に求めています。
 これまでの自衛隊の海外派兵にあたり、地上部隊支援のため回転翼機(ヘリコプター)が投入された事例はありません。
 さらに同文書の備考欄では、激しい銃撃戦の末、武装集団も人質2人も全員死亡したナイジェリアの作戦事例(2012年、別項)を引用しながら、「(人質の)文民等を死亡させるリスクもある」と認めています。
 戦争法の条文上、「駆け付け警護」でこうした「殺し殺される」作戦が、「できる」のか「できない」のか―。
 笠井氏の追及に対し、安倍晋三首相らは「戦闘行為に参加するものでは全くない」と釈明に追われるだけで、こうした作戦が法律上「できない」とは最後までいえませんでした。

南スーダン適用狙う

 戦争法で可能になった「駆け付け警護」などの新任務が検討されているのが、自衛隊が現在派兵されているアフリカ・南スーダン共和国のPKO(UNMISS)です。日本共産党の志位和夫委員長の質問に対し、安倍首相は南スーダン部隊への「駆け付け警護」や「安全確保業務」の付与を「検討している」と表明しました。(2月4日、衆院予算委)
 笠井氏は、2月17~18日にかけて南スーダン北東部マラカルの国連保護施設で起きた武力衝突で18人以上が死亡、多数の負傷者が出ており、国連安保理が同国政府軍の関与を認める声明を出す事態に発展していることを指摘。同地を視察した国連人道問題調整事務所の幹部が「戦闘は新たな地域にも拡大している」と述べており、自衛隊の駐留する首都ジュバの近くまで衝突が広がっていることにふれ、自衛隊の活動にも影響を及ぼす重大な事態だと強調しました。
 これに対し首相は「北部等では散発的な衝突が発生しているもようだが、ジュバの情勢は平穏だ」と述べました。
 笠井氏は、首都ジュバでもマラカルの事件を受けて抗議デモが起き、市街地の内外で民族間の緊張が続いていることをあげ、「内戦と武力衝突で敵と味方の区別が難しい紛争の現場で、自衛隊が戦争法で任務を拡大すれば、戦闘の当事者になるのは避けられない」と批判。「いま日本がやるべきは、人道支援の強化、和平の働きかけや、不安定な統治機構の改善など、憲法9条に基づく非軍事貢献を真剣に考えることだ」と主張しました。

ナイジェリアの「人質救出」作戦
 2012年3月、アフリカのナイジェリアにおいて、英国とナイジェリアの特殊部隊がイスラム過激派に誘拐された英国人等2人の「救出作戦」を実施。激しい銃撃戦の末、武装集団は全員死亡した上、作戦は失敗し、人質2人は武装集団によって殺害されたとの事例があります。

■駆け付け警護による 「人質救出」の作戦手順
 ①突入・鎮圧開始前までは努めて隠密に行動
 ↓
 ②必要により敵監視要員を狙撃・射殺して、突入部隊の突入・鎮圧を容易化
 ↓
 ③突入口を形成し、努めて複数方向から突入
 ↓
 ④状況により回転翼機を活用し、上空からも突入
 ↓
 ⑤突入後は迅速に敵を鎮圧し、人質救出
 ↓
 ⑥第一線救護(応急処置)
 ※防衛省内部文書の「イメージ図」から
【「しんぶん赤旗」2016年3月1日付】 

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