地球の裏側まで軍事支援/笠井議員が追及
日本共産党の笠井亮議員は12日の衆院予算委員会で、戦争法を強行した安倍政権が米国の要望にこたえて軍事支援をするため、地球の裏側に自衛隊の一大軍事基地づくりを進めている実態を暴露しました。
米国からの軍事支援要請の有無――防衛相答えず
笠井氏は、安倍晋三首相が、過激組織ISに対する米国主導の「有志連合」の軍事作戦への支持を表明したことを受け、カーター米国防長官が昨年12月に「約40カ国に協力を要請した」と語った問題を追及。中谷元・防衛相が日本への協力要請の有無を答えようとしないことに対し、「なぜ差し控えなければならないのか」と迫りました。
中谷防衛相 日米間の意見交換で日本の立場や姿勢は説明しているが、相手国の立場もあるので答えは差し控える。
笠井 要請があったか、なかったかは重要な問題だ。支援を要請するのが物事の出発点であり、(参加するかどうかの)政策判断以前の問題だ。はっきり言うべきだ。
防衛相 具体的なやりとりはお答えを差し控える。
答弁拒否を繰り返すばかりの中谷防衛相に対し、笠井氏は、オバマ米大統領が各国にさらなる軍事的支援を求めていることから「要請があったとも言えず、断るとも明言できないことは重大だ」と声を強めました。
さらに笠井氏は、政府が「政策判断」として軍事支援は考えていないと表明していることにも厳しく反論。防衛相自身が昨年、戦争法の審議で「要件を満たせば、法的理論としては適用されることはありうる」と明言したことを強調し、戦争法の強行成立で「法律上、『有志連合』への軍事支援を可能にした」ことの危険性を力説しました。
防衛省「一層の活用」を調査検討/統合幕僚長も発言
笠井氏は、自衛隊による軍事支援の具体的な危険として、自衛隊が海外に唯一もっているジブチ基地(図)強化の動きを取り上げました。
同基地は2011年に、ソマリア沖・アデン湾での海賊対処行動を目的に開設されましたが、同地域での海賊事件は年々減少し、15年は一件も発生していません。
笠井氏は「海賊事件がないのに、なぜ拠点を置き続けるのか」と指摘。戦争法が強行成立させられる以前の昨年9月3日から、防衛省がジブチ基地の「一層活用」(「防衛大綱」)を具体化するために新たな調査研究に着手していたことを明らかにして、次のようにただしました。
笠井 戦争法により可能となった対テロ戦争等にも(ジブチ基地を)活用するということか。
防衛相 テロを恐れて諸外国と協力しないと国際社会の足並みを乱す。わが国の法律の範囲内で対応する必要がある。
防衛相は、ジブチ基地の活用は「国際平和協力等を効果的に実施する観点から検討している」といいながら、対テロ戦争への活用も否定しませんでした。笠井氏は、河野克俊統合幕僚長が14年末に訪米した際、ジブチ基地の利用拡大について触れ、「今後は米太平洋軍、米中央軍、米アフリカ軍との連携を強化してまいりたい」と述べたことをあげ、次のように迫りました。
笠井 今回の調査は、米軍の戦域統合軍と自衛隊の連携・強化をめざしたものだ。
防衛相 平和安全法制(戦争法)の整備と直接的な関係はない。
笠井氏はジブチ基地の調査研究の仕様書には、ジブチに軍事拠点を持ち、過激組織ISへの軍事作戦を行う「有志連合」の主要国(米、仏、伊)を対象に「我が国のジブチ拠点に期待する機能・能力」を調査すると明記されていることを指摘。「対テロ戦争への軍事支援を否定しながら、実際には着々と検討、具体化をすすめている」と強調しました。
統合幕僚学校の委託研究では具体的機能も研究
さらに、笠井氏は「自衛隊のジブチ基地活用の検討は、戦争法成立以前のはるか前から行われてきた」と指摘。統合幕僚学校の委託研究として2014年3月にまとめられた「調査研究」文書の内容を告発しました。
同文書では「アフリカの要所に自衛隊等が利用する『国際後方支援拠点』を設置し、各種活動の利便性を図る必要がある」として、その候補地として「ジブチの活用が最適」と明記。具体的機能として「部隊の展開、訓練、休養等のための施設の設置等が必要」など事細かに列挙し、長期的には「大規模な自衛隊部隊の展開」「アフリカ国際安全保障司令部を設置」し、「日米が対等に共同作戦を遂行しうる段階」を目指すと踏み込んでいます。
笠井氏は「この調査研究は、自衛隊ジブチ拠点を、米アフリカ軍支援のための『国際後方支援拠点』にする構想・計画を提案している」として、次のようにただしました。
笠井 ジブチ基地を恒常的な一大海外軍事拠点にするつもりか。
防衛相 質問にあった資料は、いかなる資料か(わからないので)即答できない。
「事前に(資料を)読んでいない」といって答弁拒否を繰り返す防衛相。笠井氏は「この報告書があることも知らない。それで大臣をやって、戦争法の議論をしてきたのか」と厳しく批判し、「安倍首相も、こうした軍事拠点が必要だと認識しているのか」とただしました。安倍首相は「本邦から遠く離れた地域で効果的に実施する観点から自衛隊がジブチに有する拠点を一層活用するための方策を検討している」というだけでまともに答えませんでした。
笠井氏は「憲法9条を持つ日本が、ジブチを拠点に他国領土への空爆支援することがあってはならない」と指摘。「自衛隊の海外での軍事態勢づくりをとめるうえでも、戦争法は断固廃止し、(集団的自衛権を容認する)一昨年7月の『閣議決定』は撤回すべきだ」と力説しました。
【「しんぶん赤旗」2016/1/13付】