笠井氏「米企業に有利」 衆院外務委
日本共産党の笠井亮議員は20日の衆院外務委員会で、環太平洋連携協定(TPP)の核心問題の一つであるISDS(投資家対国家紛争解決)条項が米国に有利な制度になっていると指摘し、日本の法制度を米国中心の多国籍企業の利益のために変更させられる危険を明らかにしました。政府側も否定できませんでした。
ISDS条項は、自由貿易協定などを締約した国の企業や投資家が損害を受けたとして、相手国を訴えることのできる仕組みです。エクアドルの裁判所が大規模環境汚染を引き起こした米国企業に損害賠償を命じた際、ISDS条項によって判決の執行停止が命じられた事例もあります。
笠井氏は、例えば日本政府が最低賃金を引き上げた場合に多国籍企業に訴えられる危険はないのかと質問。岸田文雄外相は「協定違反だとして国内法令の変更が余儀なくされることは想定されない」と答弁しました。
これに対し、笠井氏は米国、カナダ、メキシコが結んでいる北米自由貿易協定(NAFTA)のISDS条項について、3カ国の企業が提訴した合計71件のうち、米国企業による提訴は53件で圧倒的だと指摘。逆に「ISDS条項によって、米国政府が外国企業に訴えられても負けたことがない。これが実像だ」と強調しました。
笠井氏はさらに、外務省が4月になって「国際経済紛争処理室」を設置したのは、「ISDS条項で、日本政府が外国企業から訴えられたときの体制をとり、いざとなれば賠償を国庫から支出するケースを想定しているものだ」とただしました。岸田氏は「(ISDS条項で)さまざまな紛争が生じる可能性は論理的に高まっている」と認めました。
笠井氏は「TPPは国民の利益と経済主権を多国籍企業に売り渡す協定だ」と指摘。TPPの廃案を強く求めました。