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【11.06.23】原発再稼働要請の撤回を―志位委員長の申し入れに同席

官房長官「知事反対なら再稼働できない」

申し入れをする志位委員長、笠井議員ら
 日本共産党の志位和夫委員長は23日、首相官邸で枝野幸男官房長官と会談し、定期点検などで停止中の原発について政府が「安全宣言」を行って地元自治体に再稼働を要請したことを強く批判し、菅直人首相あてに要請の撤回を求める申し入れ(全文別項)を行いました。枝野氏は「一般社会の常識で考えても、地元の知事が『絶対に反対』といっているものを再稼働させることはできない」と答え、地元自治体の同意が得られなければ、原発の再稼働は不可能との認識を示しました。
 志位氏は、政府が国際原子力機関(IAEA)への報告書に盛り込んだ福島第1原発事故の28項目の「教訓」は不十分な内容だと指摘しつつ、その「教訓」に照らしても政府がおこなったとする原発への「対策」はごく一部分に手をつけたにすぎないと表明。政府の指示した「シビアアクシデント対策」で掲げる「水素爆発防止対策」も原子炉建屋に穴を開けるドリルを備えておくという姑息(こそく)なものだと批判しました。
 その上で、「たとえば、IAEAへの報告書が『教訓』にあげた『地震対策の強化』も全くとられていない。過酷事故の際の住民の避難対策も全くとられていない。『安全性が確保』されたなどとは到底いえない」と強調。小手先のとりつくろいで「安全宣言」を発するのは新たな安全神話をつくるものだと批判しました。各自治体が「論評に値しない」「何ら質問に答えていない」と批判の声をあげていると指摘し、地元自治体への再稼働の要請を撤回するよう求めました。
 枝野氏は「ご指摘の『これで安全なのか』という疑問をしっかり受け止め、説明できるようにしたい」と答えました。
 さらに志位氏は、共産党が5~10年以内の原発からの撤退を提起していると述べ、そもそも現在の原発においては、「安全基準」を客観的に定めることは不可能だという、ことの本質的な性格をふまえた対応を行ってほしいと提起しました。
 会談後の記者会見で志位氏は、「(官房長官が)『知事が反対なら(再稼働)できない』と言ったことはたいへん重要だ」と述べました。
 申し入れには穀田恵二国対委員長、笠井亮衆院議員が同席しました。

申し入れ全文
(1)
 海江田経済産業大臣は6月18日、各電力会社等に対して3月30日に指示した「緊急安全対策」にくわえて、6月7日に追加指示した「シビアアクシデント(過酷事故)対策」が「適切に実施されていることを確認した」として、定期検査等で停止中の「原子力発電所の再起動」を地元自治体に求めた。首相も翌19日、「きちんと安全性が確認されたものは稼働していく」とのべた。
 東京電力福島原発事故にかんして、政府は、さる6月7日、国際原子力機関(IAEA)に報告書を提出している。そのなかでは、従来の安全対策の不備を認めたうえで、「地震・津波への対策の強化」など「シビアアクシデント防止策」から、「原子力災害への対応」「安全確保の基盤」「安全文化の徹底」にわたる28項目の「教訓」を明らかにしている。
 この「教訓」なるものも、今回の福島原発事故で明らかになった原子力発電がもつ「異質な危険性」を直視した対応とはいえないものだが、今回の「安全宣言」なるものは、IAEAへの報告書で「教訓」としてあげていることに照らしても、そのごく一部分に手を付けたものにすぎない。それは、「再稼働さきにありき」の立場で姑息(こそく)な表面上の取り繕いをしたものにすぎず、これをもって「安全性が確保された」などとは到底いえない。
(2)
 政府の指示した「緊急安全対策」に関していえば、そのなかで「短期対策」としてあげた「電源車の配置」や「浸水対策」などがとられただけで、みずから「中長期対策」として求めた「防潮堤、防潮壁整備」や「非常用発電機等の設置」などについては、各電力会社に計画を提出させただけで、対策はとられていない。
 新たに追加された「シビアアクシデント対策」の内容も、(1)中央制御室の作業環境の確保、(2)緊急時の原発内での通信手段の確保、(3)高線量対応防護服など資材の確保、(4)水素爆発防止対策、(5)がれき撤去用重機の配備の5項目だが、例えば、水素爆発防止対策にしても、炉心損傷で水素が発生しそうになったとき、原子炉建屋に穴を開けるドリルを備えておくという姑息なものである。
 どちらの「対策」においても、たとえば、IAEAへの報告書で「教訓」としてのべた、「地震への対策の強化」は、まったくとられていない。過酷事故が起こったさいの住民の避難体制をどうするかの対策についても、まったくとられていない。
(3)
 このように、政府が「確認」したという原発の「安全性」なるものには一見しただけでも、これだけ問題があり、到底、原発周辺の住民をはじめ国民が納得できるものではない。福島原発で重大事故がおこり、その収束の見通しもつけられない時点で、原発事故の始末ができていない政府が、どうして他の原発が「安全」などといえるのか、きびしく問われなければならない。原発立地道県の知事が、「論評に値する内容がない」、「再開のさの字も出る状況ではない」、「何ら質問に答えていない」と厳しい批判の声をいっせいに上げているのは、まったく当然である。
 政府は、定期検査中などの原発の再稼働を急ぐ理由として、日本経済への影響や夏の電力不足をあげているが、福島の災害を直視したとき、一部の産業界の求めに応じて、住民・国民の安全より、原発再稼働を優先させることは許されない。今回の「安全宣言」と、それにもとづく全国の原発再稼働の要請をただちに撤回することを強く求める。
(2011年6月24日「しんぶん赤旗」より)

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